現在のヴァイオリンと言われる楽器については17世紀半ばから1世紀半の間に完成されたと言われています。 アマティーからはじまりストラディバリ、グァルネリ、ルージェリー等々と言った名工達が、その同時代にすべての意味で集中、集約して小さな町(クレモナ、イタリア北部)で製作に励んでいました。 ではなぜその時代にイタリアの小さな町で作られた楽器が全世界を魅了するものになったのでしょうか?私たちはこう考えています。大きな点は、良質適正な表板の素材が、たまたまその年代に弦楽器作りの手元にあったということでしょう。 それが近くで製作者の手に入ったということです。また裏板の材料は産地が違うのですが、良質適正なものが運良く手に入ったことや、幸運な偶然が重なり別の素材として輸入された物が弦楽器作りに非常にすぐれていた物質であり、多くのニス(樹脂)についても全盛期であったヴェニスの商人たちにより全世界よりいろんなものを買い付ける中の一部として手に入った可能性が高く、それが幸運にもクレモナに運ばれたようです。
弦楽器の製作、そのクレモナに代表される黄金時代は簡単に終わりを告げてしまうのです。大きな原因は、どうやら供給過剰にあった様です。一般の人も弦楽器を手にするようになり物としての手軽さ(運びやすさ等)から、1世紀半の間に名工の作品で約2万個、工房、下働き関連で製作された物が20万個の物が市場に供給されたと考えられています。
それと合わせて素材としてのバルサム樹の死滅などの悪条件も重なり、高い材料を使用して手間ひまかけて製作しても売れなくなってしまいました。その為、18世紀後半に入ると製作者たちは自分の作品を作るよりは、オールド物の弦楽器を修理したりする事で、生活をなり立たせるようになってしまいました。
私たちは、時代の荒波に揉まれてそのなかで生き残った、ただ古い弦楽器も好きです。古くて乾燥しているだけで十分人間の超えられない魅力が備わっていると思います。中には見てくれは悪いのですが素晴らしい音を出してくれる楽器があります。物によっては、有名な作家の近くに住んでいて真似て作ったものもあったりします。
イタリア以外の国々で製作された200~100年前後の楽器も同じように十分魅力的だと考えております。ただ、他の所でも記述したように微妙に産地によって音色に差があり市場価格もそれに伴い差が出ております。音色は、好みがありそれぞれあり価格面からくる要素とは連動しないことがあります。
古く枯れた楽器を、一度弾いてみると、その美しく澄んだやわらかい魅力的な音の虜になり、演奏者は手に入れたくなってしまうのです。