弦楽器を購入するにあたって、こうしたほうがより良品を手に入れられるという心構えについて当店の意見をアドバイスしたいと思います。
物に関しての、判断は他のパートでそれぞれ書いてありますのでそれを参考にしてください。 弦楽器に限らず、すべての買い物に共通しますが、人生の中でも上から何番目かの高額商品の購入の為、期待値も高いと思います。まず、自分の要望する条件を書き出しそれに優先順位をつけて並べてみましょう。当たり前ですが、予算が無限でない限りすべての要求は満たされないと考えてください。 それでは、予算の範囲(上限と下限)を決めましょう。その範囲の物の中で最良の物を選ぶことに努力しましょう。予算が定まらないと、なかなか絞り込みは難しく結局チャンスを逃すことになります。 ここまではすべての弦楽器屋に共通することだと思います。ここからはストラッドのお勧めする方法です。
自分の楽器お持ちで買い換えたい方は、何が気に入らないか明確にします。殆どの場合は、ラベルの真贋や産地や販売価格ではなく、実は自分の感じる楽器からくる違和感が多いようです。なんだか弾きにくい、どうもやさしい音が出ない、音がこもった感じがするなど等です。気に入らないから替えたいと感じるのです。そのことがきっかけで演奏者は楽器屋巡りや情報収集となるのですが、なぜかラベルをもとに探す方法に切り替わってしまいます。そうなると迷路に迷い込み魔の手にかかることもあります。もとに戻り音色が気に入らないから変えたくなったことを思い出してみてください。次の段階は、年代をコンテンポラリー(現代作)・モダン(中期1900年前後から1850年頃まで)オールド世代(200年前後)はどのような感じなのだろうとかと考えを巡らせます。しかし、正直コンテンポラリー以外は、どこで見せてもらえるのかがわからない?大型店舗は、売れ筋としてコンテンポラリーは揃えているが、他はなんだか見せてくれる雰囲気ではない。数も少なくガラスの扉の奥に仕舞ってありなかなか気軽に見せてくれといえないムードがある…。と壁にぶつかってしまいます。まだ自分の要望が絞れていないため、情報収集する相手を間違っているのです。
そこで大雑把ではありますが、古いものと新しいものどちらがお望みか先ずは決めてみてはどうでしょうか?ではどうやってそれを試すことが出来るのか?となります。新しいものは大型店が得意とする商品ですし、古いものは、職人さんのいる小さな店舗(工房)の得意とする分野です。
それを頭に入れてやはり直接コンタクトを取りましょう。できれば試奏に勇気をもって出かけましょう。色々、試せて余り上手でなくとも音色や感触の判断は安易です。
そこで真贋やラベルの事は、『鑑定について』で記述してありますのでそちらを参考にしてください。ものすごく高いもの(500万円以上)意外は、ラベルは気にしないほうがいい物を選べます。
コンテンポラリーにおいて真作である確率は高まるとは思いますが、反面、一番贋作が作りやすいと言うことを理解しておいてください。理由は、現代社会は、経済的利益が得られるのであれば幾らでも偽物の商品を生み出すグローバル化というシステムが存在して、職人芸術等のこだわりの商品を重要視しない商人が世界にたくさん存在しているからです。商人からすると儲かればどのような手立ても可能で、それを見抜くことは現代社会では難しく相手は中々巧妙です。
ストラッドは小さな店舗なので古いものを修理して商品化することが多いです。オークション等で仕入れた古い楽器を修理してよみがえらせることが得意です。小さな工房などは同じような傾向にあると考えます。小さな店舗へも出かけて古い楽器も弾いてみましょう。
コンテンポラリーをお望みの方は、大型店や職人さんのいない店舗をお訪ねください。その方が選択肢は値段ごとに細かく提示され数も多いと思います。
試奏をしていますと音の質感や弾き心地は近いのに価格が大きく違う場合があります。
それは何かと言うと、ラベルの差と年代の差が大きく値段に影響します。一方、商売のスタンスの違いも新しいものと古いものとは違いが存在します。
コンテンポラリーは、一般商品として販売しようすることがより強い楽器です。扱う人やお店がそれを糧にしている場合が多いからです。また、新しいので傷も無く新作なので不具合はないはずです。ただ、多くはヨーロッパでの環境下で商品化されているため乾燥や湿度の違いが考慮されていないためにストラッドには多くのコンテンポラリーの修理依頼が舞い込んでいます。小さな店舗は、殆どが少人数で運営している為、大きな売り上げが取れません。在庫を抱えればそれだけ経営上は苦しくなります。そこで商売をする以上在庫の量では勝てないので少ない物を丁寧に扱う可能性が高いと考えます。特に、職人さんは、やはり自分が手がけた楽器はいい音色がするように責任を負いたいのです。つまり、商品に対して心がこもっている場合が多いのです。
それが一番品質や音色に影響して最終的には次のお客様へとつながるカギになることが身に染みているからでしょう。弦楽器のような、結局個性を買うような商品の場合はやはり心がこもっているか、いないかで大きく品質は変わると思います。そうなると、古いものは小さな店舗でアフターメンテ付きで買うことをお勧めします。古いものは、同一の物はありません。アフターケアーが必要かもしれません。もちろん、すべて自分の望む条件がそろう物もありません。
弦楽器を選ぶことは、友達や恋人や愛情を注ぐペットと出会う事にとてもよく似ていると感じることが多いです。選ぶ明確な理由はないのに気があったり、好きになったりします。嫌なところもあります。しかしそれ以上に好きだから一緒にいたいと思わせるものです。
その時に出身や、毛並み、など気にしすぎると折角の自分の中からくる声を無視して判断を誤る場合があります。肝心なのは、素直な心です。自分のいい感じだと思うものを選ぶことです。そのことが結局満足度を高めるとおもいます。
そしてもうひとつ大きな問題として楽器屋さん選びというハードルがありますね。もしかしたらそれが一番消費者にとって難しいのかもしれません。楽器屋さんは、弦楽器という特殊なものを購入するのではなく一般的な自動車などを購入することに置き換えれば、まやかしのお店に捕まることもないでしょう。極端な値引きや、価格の表示のないもの、根拠もなく将来価値が上がるなどのセールストークに惑わされず冷静に考えれば弦楽器屋の良し悪しも薄っすら透けて見えてきます。
落ち着いて相手を見ればある程度の社会経験がある大人であれば判定はたやすいと思います。
弦楽器ではなく、中古車や中古の家を買うと事だと頭の中で切り替えてください。
もし、相手が信用できると思ったら素直に条件を言って相談すれば、その店で一番適正と思われる数台を見せてくれます。その中から自分の好みを選ぶとよいでしょう。
最後に、楽器を選ぶ際は、必ず自分で弾いて自分で決めましょう。誰かのアドバイスで自分の感覚とは違うものを購入すればやはり後で自分に合わずに後悔する場合が多いようです。弾くのは(お付き合いするのは)ご自身です。