お店の考え方

楽器の年代別特徴と捉え方

楽器を選ぶ際で、これまた年代と言うものが大変大きな要素を含んでいると我々は考えております。
大別して、

  • 1600年中期二コロ、アマティー(ストラディバリの師匠)にはじまり1800年ころまでに製作られたものをオールド楽器と呼びます。
  • 1800年あたまから1945年前後までに作られたものモダンと呼びます。
  • 第二次世界大戦後から現代までで製作したものをコンテンポラリーと言います。

では何がそこに違いを発生させてくるのでしょう。

良い材料で腕の良い職人がつくれば、年代に関係なくすべて似たような音色になるはずなのですが、これがかなり弾いた感じがちがうのです。表現としてはいろいろありますが、これはやはり百聞は一見にしかずで、手にとって弾いてください。まったく年代により別物です。ではなぜそんなに差があるかといえば簡単な話、年を取っている時間別に音が違うのです。それは、乾燥の度合いによって振動の具合の差から発生しているようです。乾燥は、気候によって違いますのでその楽器がどこに長くあったかも重要ですね。亜熱帯地域のじめじめした地域に200年いたものと、湿度がないヨーロッパの内陸にあったものとは歴然と違うことは簡単に分かると思います。またその水分は、湿度の高い地域で濡らせばもとに戻るのではとお考えになるかもしれません。しかし、100年から150年で木材は、水分を吸ったりはいたりしなくなり堅く、強くなっていくそうです。専門的には木材のセルロース化と呼ぶそうです。つまり古いものでヨーロッパにあったものはその年代分乾燥していると言うことになります。

ここからは、私見として捕らえていただきたいのですが、楽器は振動によって音を出すため、その木材の含水率が大きければ大きいほど振動させることの労力は必要になると思います。(当然板の厚み等は同じと仮定します。)つまり、弾く際に、気の配り方や、技術的なもので、かなりの負担が新しい材質ほどかかってくると考えます。勿論技術的に高い方は、どんな楽器でも綺麗な独自の音色を出すことが出来ます。しかし、技術的に劣れば劣るほど、実は楽器の演奏に反映してくるのです。つまり、プロや上級者はではない方は、古い楽器を使用すると演奏の幅が広がったり、出来なかったことが出来たりすると考えています。

次に世代別の特徴について簡単にまとめます。オールド楽器は、言わずと知れず弦楽器の黄金期です。現在、音色が素晴らしく高額な金額がつけられて名だたる演奏家が使用されているような名器といわれるものは、殆どがこの時代に作られています。しかし時間がたっているため貴重で残念ながら傷があるものが多いです。木材の耐用年数の限界からも初期(1650年頃)のものは実際の演奏には向かないとも言われています。またその時代の物は、殆どが手作りで数が少なくなおかつ壊れているものが多いためそれだけで粗悪品と考える人もいます。しかし経年だけは、変えられないのも事実です。また作る側も、その時代ですから製作の目的が、より良い楽器作りであったと想像できます。

オールドは人間の人生の尺度を超越し引き継がれてきた道具として又、それと同じものが再現できないことからも圧倒的な価値観が全世界で認められています。 数が少なく求める方が多いため、とてつもない価格で取引されて一般的には手の届かない楽器になってしまいました。

モダンですが、ちょうどオールド世代の情報を受け継ぎそれを進化させようといろいろな人が試行錯誤した時代です。経年があり、なおかつ時代が100年ほど違うためにかなり良質の楽器が何とか残っているという点で、現在からみるとこの時代のいいものが所有可能な限界ではないかと思います。オールドの作品を手本として数多くの名工を生み出したいい時代です。地域も広がりイタリアの各地(北部中心ですが)、フランス、ドイツ、イギリスと弦楽器作りの情報の行き来が見受けられます。また大掛かりな大衆向けのコンサートなどでは強い音が必要になりその点を考慮した」大音量の期待できる楽器の進化に努力が向けられていたようです。モダンのクリアーで強い張りのある音色が好まれプロの演奏家の方も上物のモダンを使用するのが、主流とも言われています。

アマチュアの方は、やはり色々購入に気をつかうオールドよりはいろんな面でモダンの時代のものがいいのではと感じます。古さもあり健全で、欲張らなければいい音色のするものが手にはいる可能性が高いと思います。 コンテンポラリーは、現在製作されているものを中心に、第二次世界大戦後までですが、その幅で、音色の感じの差はありますが一般的にはひとくくりで見ていいと思います。製作場所は全世界どこでもあります。情報も行き渡り、当然新しいので破損の少ないものを多く存在します。しかし、残念ながら経年が不足のため弾きにくく、演奏技術によって差がでるように思います。相対的に金属的な音色がしてしまいます。それは単純に製作技術や材料ではなく、経年がないからです。現在作られているものが、後100年経つといい感じの音色に変化する可能性があります。しかし残念ながら、人間の寿命がそれに見合わないのです。物として確かなものもありますが、以前と同じように贋作は多くむしろ経済優先の現代においては、機械も発達し、情報もあり、なおかつ為替の差がある世の中ではどうやら第三国で作成し、一流のラベルを張り、外見の見てくれを整えて販売しているのでは?と疑いたくなるものを見かけるのも事実です。購入の際は、ラベルで買うと痛い目に合うのは、コンテンポラリーではむしろ同様以上の事例を見ています。ただし、価格の面で魅力もあり、見た目も綺麗なのでアマチュアやスターターの方には、希望にかなう物があると思います。 各世代いろいろ特徴もあり先ずはラベルなどに拘らず手にした感覚を大切にしたほうが合ったものを手に入れられます。

弊社は古いもの賛成派です。かといって古ければすべていいとは言いません。お客様を見ていますと相対的に古いほうを手にするとそれよりもなかなか新しい物に戻れないのが現実です。これはすべてのレベルの演奏者に共通です。年代の基準は、50年がひとつの単位と捉えていただければいいと思います。それをあたまに入れて試奏してみてください。結構な差を感じるはずです。実際コンテンポラリーから古いものに交換される方はたくさんいますが、古いものから新しいものへ買い替えをされた方は、お客さまのなかで現在までおりません。弾く側の労力は確かに古いほうが演奏において音も出しやすく気分も良いはずです。